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「どうして、黒渦が」  僕が黒渦を凝視するように見続けていると、儚さんは疑問気に言ってきた。 「その渦は、異象への入り口よ。異象は生きてはいないけど、存在はしている。だから、その存在を保つ為に、自ら、小さな空間とも呼べる世界を構築しているの。つまり、黒渦の先にある世界そのものが異象であり、異象そのものが世界ってことね」  その後に儚さんは「この異象世界に入って、異象とケリをつけるのが、異象から解放される為の最終段階よ」と付け加えたが、生憎、僕の心境は、それに反応する程、余裕ではなかった。 「ちょっと優吉くん! この場に来て混乱しているの? 情けないわねえ」 「いや、ちょっと……」  僕が心境冷めやらぬといった態を見せ、額に汗を滲ませていると、東野が僕の代わりに状況を説明してくれた。 「儚さん、優吉が動揺するのも無理ねえんだよ。実際、俺だって動揺している」 「どうして?」 「今、俺達の目の前に現れている黒渦。こいつは確かに、二週間と少し前にも突如現れ、俺達の大切な友達を呑み込んでいったんだ」
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