Prologue

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 それにしても、相変わらずの美少女だ、甲斐城いだき。肩程までかかった、茶髪気味のストレートヘア。  それを惹き立てるような、清純で淀みのない顔つき。最高だ、最高だよいだき。  勿論、そんな美少女である以上、意を決していだきに告白した男子は少なくない。  が、全員フラれて終了。理由は皆同じ「恋愛感情が持てないから」。いだきは基本的に恋愛感情そのものを誰に対しても持たない。  そりゃあアイドルユニットなんかを見て「この人格好いいよね」なんて女の子らしい発言はするが、所詮そこ止まり。実際その人から告白されても、いだきは首を縦には振らないだろう。  そこでついた呼ばれ名がこれ。  崖の上のいだき。  まあお高い存在、という意味なんだろうが、崖の上のポニョから引用するとは、あまりいただけない話だ。 「それにしても、いだきが遅れて来るなんて、珍しいな」  いだきは時間をきっちり守る。人を待たせるのが嫌いな奴だ。だからこそ僕がその疑問を問うと、彼女は照れくさそうに 「朝風呂してたら湯船の中でついうっかり、寝ちゃってて」  と言った。  僕は脳裏に湯船で寝ているいだきの姿を思い浮かべる。生憎、いだきとお風呂に入ったのは小学校四年生の夏が最後だから、どれほどの胸になっているのは分からない。  でもCカップぐらいだと思う。  そんな僕の予想。  それにしても湯船の中でうっかり寝るだなんて、やっぱこいつ、天然入ってるわ。
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