6/17
前へ
/92ページ
次へ
 儚さんは、鼻で息をつくと、考えを纏めたように、見透かしたような態を見せた。  この見透かした感じ。  これぞ儚さんだ。 「優吉くん、もう大丈夫みたいね」 「はい」 「じゃあ、尋ねるけど、その黒渦に呑み込まれたっていう、貴方の友達、名前は?」 「甲斐城いだき。僕や東野と同じクラスの女の子です」 「そう、貴方の彼女なのね」 「違います」  こ、この人、今、カマかけようとしてたよね! 僕に対してカマかけようとしてたよね!  でも残念。僕といだきは本当に恋人じゃない故、その手には引っ掛からないのだった。 「なあんだ。つまんないわね」  カマかけられなかったからって、つまんないって言うな! 僕はお前のネタか!
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加