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「ま、そのいだきちゃんってのが、二週間と少し前、黒渦に突如呑み込まれた、と」 「そうです、ね」  儚さんは、ふっと息を吐くと、一瞬、目線を上にやった。戻したところで、会話を続ける。 「そういう場合、まず前提的に考えられるのが、いだきちゃんが以前から異象を抱え込んでいたっていうケースなんだけど、黒渦に呑み込まれる以前、いだきちゃんに何か可笑しい様子はあった?」 「可笑しい様子、ですか」  僕は頭に手をやった。東野は暫く顔をしかめ、最後は僕の方を見て、首を横に振った。  だよねえ。 「特に無かったと思います。別に暗い印象も、思い悩んでる印象も、見受けられなかったです」 「そう、じゃあ話は厄介になってくるわね」
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