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「この、明らかに相互関係を崩した、上下関係から、いだきちゃんが黒渦に呑み込まれた要因が、三つ考えられるわ」
儚さんが、僕の額に、額をひっつけてくる。いや、これは無いでしょ、流石に近すぎるって! 目、近い、鼻、当たりそう、唇、僕の初心な唇、奪われそう!
僕が咄嗟に、大きく、大きく足を後ろにステップさせ、距離を取ると、儚さんは嘲る。
「あらやだ。優吉くんって、ウブなのねえ。貴方、今、私の唇、意識したでしょ」
「誰だってあんな超近距離に迫られたら仰け反るわ!」
「いや、俺だったらそのまま……」
「東野、お前は希少種だ! 今、お前は天然記念物に指定されたぞ! 馬鹿の希少種に!」
ああ、もう。何だこの集まりは。明らかに僕だけ浮いている。可笑思議優吉と、明らかに浮いた名前を持っている筈の僕が、明らかに浮いている。
「ひょっとして優吉くん。貴方、高校生にもなって、ファーストキス、まだなの?」
……いちいち。
いちいち癇に障る女だ。
見透かしてんじゃねえよ!
気にしてたのに、全く。
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