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「っと、話が逸れたわ」 「お前のお陰でな」  そんな僕の言葉を無視するように、聞こえなかったかのように、儚さんは言葉を続ける。 「いだきちゃんが黒渦に呑み込まれた要因として、まず考えられるのが、実はいだきちゃんは、皆に悟られないように異象を抱え込んでいて、丁度そのタイミングで、偶発的に、異象と巡りあう前提を達成してしまった、ということ」 「偶発的に、ですか」 「そう、まあ、異象と巡りあったきっかけを思い出すなんて、偶発的に起こることだから。ただ、その場合、黒渦に呑み込まれたということは、いだきちゃんの異象がそれ程強力だったという、裏返しにもなるけど、ね」  儚さんは、口の中に溜まった唾を飲み込むと、話を続ける。 「次に考えられるのが、そのタイミングで、いだきちゃんが、何かを強く望んだということ。つまり、黒渦は突如現れたんじゃなくて、巡りあうべくして現れた、ということ」 「巡りあうべくして、ですか」 「そう、ただ、この場合でも、対象者に罹る、という前提をとばして、強制的にいだきちゃんを呑み込んでいることから、異象が強力であることは間違いないけど、ね」
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