Prologue

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 愛想の無い表情を浮かべる僕に対して、いだきはそんな所知っているなんて凄い! といった表情を浮かべている。 「ふふん、俺に着いて来い」  あちゃあ。完全に調子乗りやがったよこいつ。だが今は仕方が無い。こいつのペースに合わせよう。  僕は微笑み、慕うように 「流石だな東野」  おだてる感じで言ってみた。 「だろ、だろだろ!」  こいつ、意外と扱いやすいな。  東野は溢れんばかりの自信を胸に、僕といだきを先導していく。それにしても、中々裏通りの方に入ってきた。こんな所に、カラオケがあるのだろうか? 「東野、本当にこっちなのか?」 「もう少しだ。本当裏の裏にあるからな。だから、知る人ぞ知る」  わかった、わかったから「知る人ぞ知る」って言って格好つけるのは止めてくれ。こっちが恥ずかしくなってくる。 「そう言えば、いだきの声が聞こえてこないな」  後ろを振り向いた東野が、突如として目を丸くする。何事だと僕も後ろを振り向くと、思わず目を丸めた。  だって丸めざるを得ないだろう? 起こっている事態が異常過ぎるんだから。  アーケード裏を通っていて本当によかったと思う。こんな光景、知らない人が見ていたらそれこそ、大ニュースになっていたかも知れない。  目で、視覚で確認しているのに信じられない。これ程の証拠があっても、信じられない。  だってそうだろう? 僕達の背後に突然、身の丈より少し大きい程度の黒い空間が現れて、いだきを呑み込まんとしているんだから。
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