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そんな帰蝶の明るい笑顔に釣られる様に、土方は声を上げ無邪気に笑っていた。
こんな風に笑ったのは、何時以来だろうか?
きっと、忘れてしまう程ずっと昔なのだろうと、土方は思ったが、何を馬鹿なと思うと軽く首を横に振り、その考えも直ぐに自分の中から消し去った。
(俺は、何を血迷った事を考えている)
その後、土方は帰蝶に泉を調べる様に促してから、二人は泉の周辺を懸命に調べてみたが、思う様な収穫は無かった。
気付くと、辺りは茜色に染まり先程まで聞こえていたカッコウの囀りは、すっかり消えている。
二人は、泉を後にして暗くなる前に着く様にと城へと足を向け、ひっそりと静まり返った道を並んで歩いた。
会話など無かったが、お互い今はこの距離が心地良く安心出来た。
松平の元へ着く頃には、ずぶ濡れだった二人の着物も乾いていた。
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