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その豪快に笑う近藤に、横から口に物入れて喋んなよ、と苦笑しながら土方がお小言を飛ばす。
沖田と藤堂も、自分らはもう二十歳越えなんだからいい加減子供扱いは止めてくれ、と冗談まじりに笑顔で肩をすくめた。
会津潘からは、念のため些か金遣いの荒いだろう芹沢派とは別に、月に二十人程度がほどほどの生活できる程の支給金と米を頂ける話がついていた。
壬生浪士組の処遇と立場が確立すれば、幕府からの給金が出てもう少しくらい贅沢できるのだろうが、結成されたばかりの壬生浪士組にはそれこそ贅沢な話であった。
「しかし小梅君の作る料理は美味しいなぁ
この小松菜の和え物も、江戸の濃い味付けでとても美味い!
京の品のよい味付けもいいが、やはり江戸の味のほうが俺の舌には合うらしい
もしや小梅君は、江戸の出なのかね?」
「、」
こくりと、頷く。
道場では京の味付けだったが、近藤らは江戸の出、ならば江戸の味のほうが好みだろう。
斎藤との酒のつまみの味も江戸の味、それを応用した。
…しかし、藤堂といい近藤といい、極めつけに土方と、二人は短い付き合いなので仕方がないかもしれないが、自分が髪を切ったことにも気づいていた土方が気づかないともなると、もしかしたら自分の女装は案外上出来なのかもしれない。
そんな事を考えながら体を下げて、濡れ布巾ごと飯櫃の蓋を開け、湯気をたてる飯を茶碗へと柔らかくよそう。
(………やっぱり、世間知らずのいいとこ育ちのあの人が料理なんて…出きるわけがないよな)
その随分と様になっている姿を見て、土方は、ふぅ、と軽く息を吐き出しにわかの予想を掻き捨てた。
土方にとって年の離れた、弟のような存在の嘉一は、雰囲気や顔立ちこそこの小梅に本の少し似てはいるが、今のようにてきぱきと家事をこなすような性格ではない。
それは、友人としてすぐ側にいたから、分かる。
「小梅」
「?」
土方が飯のよそられた茶碗を泉が藤堂らに渡しているのを眺めていると、泉のすぐ側の斎藤がひょいと声をかけた。
こてりと首を傾げる様を見て、斎藤が続ける。
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