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「一…あのさぁ、毎日毎日洗濯に褌出すのやめてくれやしない?」
庭に出した物干し竿に洗濯済みの衣類を干す作業が一段落すると、背後の縁側で猫の脇の下を掴み持ち上げる斎藤を振りかえる。
二日くらい使い回せよ、と言うその容姿は、男だ。
「……というわけで御座いまして……悪気があったわけではないのですが、一身上の都合とはいえ性を偽った点は謝罪いたします」
人の後を付けてくるだなんて何と不躾な、とあの後永倉は斎藤に半殺しにされかけたが、これ幸い、沖田らと泉、挙句お春と常にまで押しとどめられ、永倉も手を合わせ謝罪すれば、どうやら怒りの気もおさまったのか怒る気も失せたのかしたらしく。
しかし小梅の正体がばれてしまってはどうしようもない。
流石の泉も、斎藤以外の人間に女装を把握されている状況で仕事をするなど、羞恥極まる。
こうなっては仕方がないので、泉は潔く身を明かす事を選択した。
「いやはや、しかし……欠片も気がつかなかったなぁ」
近藤が、腕を組ながらうんうん頷く。
その姿を、泉はまるで毒気を抜かれたかのようなあっけらかんとした表情で首をかしげる。
「…あれ、おじさん怒ってないの」
「む?何を怒る理由がある?
一身上の都合なら仕方なかろう?
それに、男ばかりのむさ苦しいところに一時でも華が咲いたのだから、むしろ感謝したいところだ!」
「え…あ、は、はぁ…」
「しかし、あれほどの変装技術があれば、剣が扱えなくとも何かしらは仕事の役に立ちそうだなぁ
なぁ、歳よ」
近藤からそう声をかけられて、今までどこか居心地悪そうに体を揺らしていた土方が、ぱっと顔を上げて、上げたかと思えば、そちらを見ていた泉とばっと目があって、今度は困ったように視線をふらふらと漂わせてから、近藤へと視線を向ける。
近藤は、こんな風に動揺した義弟を見たことがないからか、少し面白おかしくその様子を見守った。
「ん、あぁー……そうだな、情報収集とか、そういうのには向いてそうだな
………はぁ……」
「らしくもない
何ため息なんてついてるんだい?土方君
もしや具合でも……」
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