鉄扇の人と浅葱の夢。

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「時に嘉一君 君は俺らの経緯…というか、何故此処でこうしているか知っているだろうか?」 「はぁ、経緯ね、存じてますよ 一から聞いています」 縁側で日向ぼっこをしていたらしい近藤の所に、淹れたばかりの茶が入った茶器と湯呑みを盆に二人分乗せ持っていくと、今度は意外にも時論の混じった会話となりそうだった。 しかし、本来なら局長と一般隊士が並んでお茶なんて、滅多にあり得ることでもないのにあり得てしまっているのは、近藤の歳や階級などに妨げられることのない、この人好きのする性格からなのだろう。 「最初は、上洛する将軍の警護で浪士組として集まったんですよね 二百余人くらい集まったんでしたっけ? それで、京に着いたら着いたで、浪士組提案者の清川八郎が掌返したんでしょう 君らには将軍警護のご公儀に集まってもらったが、実はそれは嘘で、江戸に帰り天子様の為に尊皇派として働けー! ……といった風に」 「うむ あの男には困ったものだ……その通り大人しく江戸に帰っても良かったんだが、どうにも許せなくてな 他の皆はあの清川の弁舌に巻かれてしまったが、あれは都合のいいように言っているだけで結局我々を騙していた……そんな男にあのままついていっても録なことはないだろう 無論、天子様の為に働きたくない、などとというわけではないぞ?」 「嫌だな、分かってますよ それで、浪士組内でも考えを同じにした幾数名と共に浪士組から分離しこの京に残った それで、今月の十五日会津藩お預かりの壬生浪士組に それをきっかけに、今隊士募集をしているわけですね」 そこで一度、二人で茶を啜る。 泉にとっては苦くない丁度いい味だが、他人にとってはどうだか分からない。 ちらりと横の近藤を見 「渋いですかね」 「うぅん、俺はもう少し渋みを抑えてもらえると飲みやすい ……というか、嘉一君 こんな雑用みたいな事せんでもいいんだぞ、君はもう女中ではなく一隊士なわけなんだからな」 「……えぇ、ありがとう、でも俺が暇だからと好きでやってるわけですから、たまにくらいいいでしょう? …………そうそう、私も武士というものが見たくて此処にいるんです」  
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