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突然の話題転換に、近藤は口をつけていた湯呑みを下に降ろす。
そうして、その、自らが此処に入隊した理由を話し出した青年の横顔をじっと見つめた。
ただただ真っ直ぐ、庭の方を見ている。
そちらに視線を向けると、桜、そろそろその花弁が散り行くかもしれぬ美しい桜が目に入った。
「歳の背を見て憧れました
彼が、きっと貴方もが探している、武士というものを見つけたい
そう思った
彼があそこまで憧れる武士(もののふ)という存在は、どんなものなのか
どんな風に美しく生き、散り行くのだろう
ただそれを知りたいのです
あなた方と道を一緒にするのはそういう理由もあるんですよ」
ざわっと春風が音を立てて、それに靡いた薄桃色の花びらが一枚、泉が手にしている湯呑みへふわりと浸る。
「…………」
自分の弟分は、どうやら彼の人生に多大な影響を与えているようだった。
彼は、真剣な表情で自分を見ている近藤を見やると、また穏やかににこりと優しく微笑んで
「新撰組隊士、舟山嘉一
改めて、よろしくお願いしますね、近藤局長!」
(武士というのは、如何様なものなのか)
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