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「はっ初めまして、芹沢局長
ご紹介賜りました舟山嘉一、です」
自分の方が格下なのだ、当然、相手に頭を下げさせるには道理が行かない。悪い印象を与えないように、直ぐに深めに頭を下げた。
(しかし、芹に鴨か…珍妙な名前だな)
少しして上げた嘉一の顔を、芹沢は笑みを全面に押し出して見物してからその色好きな笑みを更に深め笑って見せた。
「おぉ、なかなか礼儀がなっているじゃあないか!
話には聞いているぞ、あのバラガキの弟子なんだって?」
バラガキ、というのは、土方のこと……というか、この頃の『悪餓鬼』だとかそういったことを指す単語だ。もう三十路にもなるというのに、土方は未だにバラガキだとかいう通り名に纏わりつかれていた。
まぁ、確かに、バラガキには違いないのだが。
ただ、芹沢の言葉には内容から取れるような、馬鹿にしたような響きはない。むしろ、あのバラガキの弟子かぁ、とまた面白そうに揶揄しているような口振りだ。
「とりあえず、入って茶でも飲みなさい
他に前川に宿を置いている連中を紹介しないといけねぇ」
「お手数おかけします」
前川の家族は八木家とは違い、芹沢がここを屯所にすると決めた際に親戚の家へ引っ込んでしまった。そのためか、まるで我が家であるかのように屋敷内に上がっていく芹沢の後について、二人も中へと入って行く。
八木邸と比べると、こちらの前川邸は幾分広い気がする。後々人員が増えたりすれば、向こうでは部屋が足りなくなるだろうから、そのうちこちらもしっかり部屋を整えないといけなくなるだろう。
少し歩いた所の客間に通され、二人は並んでちょこんと腰を降ろす。
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