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「…………
どうもお久しぶりで……男の大事なとこはご無事ですかね?
……まぁ、例え無事でなかろうと? 困る方がいるとも? 思えませんが……」
「お……おやおや、舟山君……それは一体何の話だね」
「あはははは……何の話ですか、ね……?」
「は、はははははは……!」
はたから聞いたら変な会話に、沖田と芹沢は顔をあわせて首を傾げる。
嘉一の斜め前、酷く引き攣った顔色で沖田の正面に座った髷の男…新見錦という。
感のいい御仁は以前この男の名が出た時点で気づいていたかもしれない。
そして奥に、これは参ったというような表情で並んでいる男のうちには、嘉一が確かにその目で睨んだ覚えのある品のない、眼帯の男。
すると芹沢はお互い知り合いなのだと思ったようで
「二人は存じの仲らしいぜ、沖田君」
「みたいですね、ねぇ嘉一君、そうなの?」
「それが前諸々の事情で喧嘩を吹っ掛けられ…」
「何!?」
「あっいや芹沢先生…先に刀」
「まぁ無事手打ちになりましたけど!
ね?新見副長?」
先に刀を抜いたのはこっちだ、などと言われては非常に面倒くさい。
どうやら先ほどの反応からして、芹沢は「喧嘩を吹っ掛ける悪い子はいねーがー」な人だろう。
沖田から釘を刺されている身としても、よい第一印象を落とすようなことはなるべく避けたいと思っている嘉一と、芹沢が懐から扇を取りだそうとする横の新見とで、この件を終いにする事は利益が無事一致する。
「なら構わんが……」
そう芹沢が扇を仕舞うのを見て、沖田はこれ以上何か起こっては面倒だなと思ったらしく、確認の意味で嘉一を一瞥してから芹沢らに向けて笑顔を向ける。
「では紹介も終わったし……僕たちはお暇しますね、お世話様でした」
「あ、うむ
なぁ沖田君、舟山君は土方君の弟子とはいえ試衛館の出ではないだろう?」
「はい?……えぇ、まぁそうですが……」
その確認の言葉を聞き、沖田は不審そうに眉を寄せる。
芹沢は立ち上がると、沖田を見ながらぽん、と嘉一の肩に手を乗せる。
「どうだ、舟山君は前川邸で過ごしてみては!」
その言葉を耳に入れて、沖田は芹沢に見られているからしなかったものの、視界から外れる嘉一と新見、奥の眼帯(平山という)らがあからさまにげぇっ!!とでもいうような顔をする。
「この態度、なかなか気に入ってしまってなぁ
どうだね、舟山君」
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