阪の絹糸はお幾らでっか。

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「あー……うぇっ」 少し外れた場所にあるという便所の所で、汚い話だがいろいろ試行錯誤すれば何とかその不快感の原因を吐き出せた。 厠の前でうんざりとした様子を露骨に出して喉仏を撫でながら 「かーっ、気持ち悪かった……うぇっ、うー、まだ感触残ってる……」 「……なんや……兄ちゃん……、大丈夫か」 「え? ……あぁ、大丈夫ですありがとう……」 そこらを通りかかったらしい長身の男が体を覗かせ、京とは違うこの辺りではよく聞く訛り口調で様子を聞いてくれたものだから、嘉一は少し微笑み店へと戻ろうと体を起こす。 「………………ん?」 「どしたん……」 ひくり、嘉一の頬が大しけの波が打ち寄せるかのような嫌な予感に僅かにひきつる。 まさか、まさか、………………何処だっけ? 参った様子を一瞬見せただけの様子を瞬時に感じ取ったらしい男に少し戸惑いながら静かに問う。 迷うような場所でなかったら、とんだ赤っ恥だからだ。 「あの、このあたりの蕎麦屋……州備屋っていうの…存じないですか」 「あぁ……あそこのうまい蕎麦…… ……道、迷ったん……?」 「…………」 「………………」 するとその長身の男はひょいひょいと手で嘉一を招いて 「とりあえず……大通り行こか……」  
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