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「嘉一君」
びくん。縮こまった肩が大袈裟に跳ね上がる。
「嘉一君、嘉一君……大丈夫、下がっていて
平助君、芹沢局長と新見局長と近藤さん、呼んできて
土方さんは……いいや、あの人、嘉一君に過保護だし
サンナンさんも土方さんに伝わるからいい
一君は嘉一君を見ていてくれるね」
てきぱきと指示を出し藤堂を走り出させた沖田は、岡田を前にすらりと驚くほど堂々と立ってみせた。
ぎらり、とあの好戦的な光を爛々と宿した目を岡田に向ける。
「お前、何」
「なんじゃ、そいつの、仲間かの?
めんど……まぁ、殺さんよ、礼、礼……」
「ふんっ、その一区切り一区切りの喋り方……苛つくな
後ろの会津藩士、斬ったのは君でしょう、こっちには十分ばっちり君を殺す理由がある」
「癖じゃ、黙っちょれよ……
あぁ、でもの、そこのそいつ、斬ってくれて、感謝しとるんじゃ
そいつ、俺んことを足軽足軽うるさいったらぁ、堪らん
…………何じゃ、おまんは俺と斬り合いたいんか?」
「この子に手を出すのなら
即行退くなら見逃そう」
ちゃき……。
抜かれこそしなかったが、沖田と斎藤の腰で微かな音が鳴る。
その刀のような鋭さをもった言葉に、岡田は更に口角を吊り上げた。
そしてさもおかしそうに、からからと笑って。
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