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「退いたる、退いたる
おまんらあは……そこのとは気迫が違うき、流石に、一人じゃ危なかよ」
「………………」
最後まで敵に背中を見せることはせず、長い影を伸ばし、傍で伸びている男の襟を片手に裏道へと去っていこうとする。
それど、それを引き留める声があった。
「…………会津藩士を殺したのは、何故?どうして?
何処に殺す必要があったんだ」
ぽつり、と。
「……そりゃ、おまんが名前をばらしたき……、面倒な事になるかも、思うたわい
それだけじゃ
人を殺すのに、深い意味は、……必要じゃあないじゃろ?
いちいち、深くふかあく、考えておったら、きりが無かよ」
嘉一は問うた答えが返ってきたにも関わらず、石のように微動だにしなかった。ただ、固い地面に足をつき、切ないくらい美しく椿に塗れた愛刀の柄をきつく握り、俯き続けていた。
それを見て、以蔵はその姿を馬鹿にするように、面白い見世物を見たかのように目を細め、口角を吊り上げ、不敵ににやりと
「じゃあ、またの、次会うときあったら……そん時は、また、成長を楽しみにしとるわ
の、カイチ?」
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