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恐らく町人によって告げられたのか、それを聞きつけた同心らに囲まれていた沖田達は、聞き覚えのある足音を耳に入れ、そちらに目をやった。
そのでかい図体は、遠くにいても酷く目立つ。
隣を走る自らの師も彼の隣となると何とも言えぬ。
「芹沢局長、近藤さん、新見局長」
呼び掛ければこちらだと気づいたらしく、わさわさと同心共を掻き分けて二人の前に立つ。
近藤は二人に怪我は、と問うが、その脇の芹沢はあくまで冷静に二人を見下ろす。
「状況は」
「わざわざお呼び立てしすみません
嘉一君……会津藩士と浪人との喧嘩に止めに入ったらしいんです
商人らしい男が僕らの連れだろう、と呼びに来たものですぐに駆けつけたのですが……
その時にはもう会津藩士は斬られていました
その時嘉一君の刀は濡れていなかったので、恐らくは浪人が斬ったものだと思います」
「彼はどうしたかね?」
「向こうで同心に囲まれてます
会津藩士二人、浪人一人、殺したのは彼じゃないか、って
嘉一君何も喋らないから……今にも連行されかねないので、来てくれて助かりました」
「…………あの、平助は?」
走らせた男が共に戻ってきていないことに気付き、斎藤は少し訝しげに近藤へと聞く。
すれば顎に手を添え、困ったように
「平助なぁ……歳に捕まってるよ」
「げっ」
「どうして俺には話せねぇんだ、ってさ
俺たちも何も聞かされないで、ただ州備屋に、と言われ来たんだが、……酷いな……」
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