蔓草紫藤、合わせりゃ彼の心内。

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結局男の仲間らしい輩が間に入ってきたものだから撤退を選んだのだが、その後岡田は少々勿体無かったと思わざるを得なかった。 あの時の三人、内一人はよく見ることが出来なかったが、残った二人……。 左差しの総髪から滲み出る殺気は凄まじかったし、色黒の方は立ち姿からして相当の手練だった。 先ほどの呆気ない会津藩士よりかはよっぽど楽しめただろうに……。 (あの殺気は、もう誰かしら殺した奴のもんじゃのう……) しかし、あの二人と斬りあって負けたらどうしようもない。 まだ、自分はあの人の役に立てるのだから…………。 「帰りましたきー!」 門前でそう声を上げて、ずんずんと邸の中まで入っていく。 伸びている男をそこらへぺいと投げて草履を脱いでいると、何かが頭を叩く。 「いてっ」 「ようやく帰ってきたかバカモン!」 「武市せんせぇ!ただいまですき!」 首を曲げ見上げた先にいたのは、一人の大男。 武市半平太。 頭を叩いたのはどうやら彼の持つ鉄扇だったらしい。 「うん?三人で行ったと聞いたが……もう一人はどないした」 「斬られましたき、置いてきました」 「…………まぁよいわ」 からから笑って答えれば、どうでもよさげにため息をついた後、岡田の髪の毛を掴みあげ引っ張り出した。 そのまま立ち上がり廊下へと進みだす。 「ぎゃっ、武市せんせぇ!痛いじゃありもうそうか!尻!尻が、擦れるきぃ!」 「おまんは本当勝手じゃのう! 今日は長州の桂さんが来るとあれほど……」 「え?」 「こないだは黒装束もつけんで天誅に行くわ、目撃者ば見逃すわ、とことん学がのぅ馬鹿じゃ!」 「でっでも、わしは学がのぅとも、武市せんせぇの、役に立てれば、それで!それでいいですき!」 そう精一杯訴えれば、武市は心底(お前は馬鹿だ)と言わんばかりに顔をしかめる。 それから、そんな顔をされて焦った様子を見せる岡田を見下ろしながら言ってやる。
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