生きるか死ぬか。

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ていうかさ、と、泉は口には出さず、心の内でぽつりと呟く。 予算的にどうやって買ってきたのかが疑問が湧くのだが。800、4000、と考えれば、泉が購入の為にに封筒に入れ手渡した金額を優に越えているのは有無を言わない程、明確だ。一資金にしやがったな、と悪態つく。 しかしこれ以上何かを言うと、また面倒臭いことになりそうで、俯き額に手を当てながら 「明日買い直して来てくれよ、ここいらの本屋じゃ売ってないんだから」 「えーっなんでー?」 「なんでも!ほんとに! ……お願いだからさぁ、頼んだぞ……」 たしなみ程度でも剣道を学ぶ人間としては、宮本武蔵といい新選組といい、とにかく剣技が強い人物には憧れるものだと泉は言う。 彼自身強いわけではないし、高校での実力も真ん中止まりだった。自分等よりとんでもない腕の連中がいるものだから、大会なんて出れるものじゃない。 一番の栄光は、インフルエンザが流行った週に開催された、地元の小さな大会での準優勝だろうか。 けれど、そんな剣豪たちと共に剣を振るってみたいとは思う。 (……………まぁ、斬られるのはごめんだけどさ) 「あれっえっお兄ちゃんどこいくのー?」 つい最近購入した、白いお気に入りのコートを引っ付かんだ泉に対して、明日香が甲高い声を張り上げた。 「近くの本屋で売ってないか見てくんの! 駅までいくから帰り遅いかも」 別に田舎だからではない。定期があるので駅までも問題ないし、バスの本数が一時間に一本だからとかでもない。それは埼玉の上の方だ。 (田舎じゃねぇから!埼玉田舎じゃねぇから!! だ埼玉とか言った奴まじぶっとばす……ほうれん草とか枝豆とか、自慢の品! マジ食ってみろって……) むしろ存外本屋が沢山あるもので、見て回って遅くなるかも、というわけだ。 「ん…分かったー、ちなみに今日の夕飯はカツ丼だそうです」 「即効で帰ってきます」  
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