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ピ――――ピッ……―――ピ――――
ふいに意識が覚醒すると同時に聞き慣れない音がした。いや、何時だったか。確か危篤の祖父を見舞った際に確かにこの耳で受け入れた音だ。
(…なんで、そんな音が)
「AEDをこっちに!!」
「し、しかし、他の患者がおり手一杯で…足りません!」
「おい林、何してる! 道具が足りないならそこらの施設から取って来るぐらいできないのか!!」
(んん? AEDってことは電気ショック…? 待て待て…)
AEDという名前には聞き覚えがあった。
小学生だった頃か、忘れたが、校庭に面した保健室にAEDなるものを設置したのだという話を教師から聞かされた筈だし、一社会人であればその知識があって当然。街の至るところに設置され、つい最近にも、購入したばかりの薄型テレビでその使用方法を目にした。
しかしそれを使用するなんていうのは、心肺が微弱な患者に対して、の筈だが。
「お嬢ちゃん離れて…」
「…お兄ちゃん…!」
(あ…れ、この声……)
ピ―――――――――
「泉お兄ちゃん!!目ぇ開けてよ!!」
右手に添えられていた温かみが。刀タコの無い、細く薄い、小さな手指が引き剥がされるように離れていくのを感じて、泉は思わず心内で唸りを上げた。
(……えっなにそれ急展開……
嘘、もしかしなくてもさ、俺……………)
ピ―――――――――――――………
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