梅だとか、舟だとか。

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  「こいつが小梅です」 木綿の上品な藤色の着物に香色の帯を文庫で結って、顔は、白粉を本当に薄化粧程度、唇に紅をほんの少しだけ乗てすませる。 山南の言葉通りに後日道場に来た沖田の話によると、とりあえず女中の件は実際に会って話を、という事になったらしく、斎藤と泉は八木邸の一室へと案内されていた。 今で言う面接のようなものを行うということだろう。 責任者が連れてこられるまで、八木の人間が出した茶をすすりながら端座する。 「出来る限り喋るな、声でばれる」 「ん…分かった」 暫くし、障子の前に人の気配がしたかと思うと、静かな音を立てて障子が開く。 そこに立つ男を見て、泉は密かに目を見開いた。 「やぁ、斎藤君 この間はわざわざ受検しに来てくれたのに不在ですまなかったなぁ」 「いや、全然構いませんよ、近藤さん」 (拳骨の…!え、てか近藤って…え!?は…ちょっと待て、人違いか?) 泉が以前一緒に酒を呑んだ、拳骨を口に入れる特技を持った男、その人だったのだ。 思わぬ再会に驚きはするが、こんな格好をした状況で久しぶり!なんて気軽に声をかけられるわけもない。 そんなのとんだ気が違った輩でないとできない荒業…所業であろう。 しかも、その後からまたぞろぞろと見覚えのある連中が入ってくるではないか。 斎藤はまさか一気に顔見せになるとは、と思わず頭を抱えたくなった様だし、泉も流石にこんなにも知り合いが集まるなどと困ったらしく、酷く微妙な表情をしている。  
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