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「局長がいるというのに副長がいないとは…
いかがなされました」
「ん?あぁ、あいつは少し遅れてくるそうだ
あいつ何やら最近人探しをしていてなぁ」
「そうですか」
斎藤が泉のことを紹介するのと同時に、泉は畳に手をつきなるべく女らしく頭を下げる。
近藤もそれに対応して、ご丁寧に、と男らしい笑顔で軽く頭を下げてからゆっくりと腕を組んだ。
「壬生浪士組局長、近藤勇だ
それと奥から、沖田総司、藤堂平助、原田左之助、永倉新八、山南敬介、井上源三郎という」
斎藤を右に、近藤を正面に、そしてその試衛館の面々を左側に。
左側からは遠慮もない好奇の視線が自らに向いているが、泉は出来うる限りで冷静を装うとする。
泉は体ごとすっと方向を変えて、試衛館面々に向かい再び深々と一礼する。
その時、座敷の端のほうに江戸で見た顔を見つけ、嘉一は思わずあ、と呟きそうになる。
道場で知り合った初めての歳の近い友人、平助…藤堂平助だったのだ。
袖振り合うも多少の縁、とはいうが、こう二人も知り合いが出てくるとなってしまうとどうにも多少の縁どころではない。
けれど気づいた様子もなく、藤堂は泉から近藤へと視線を向ける。
「でもよ、近藤さん」
「ん?何だ平助」
「女中を雇い入れるのには文句無いんだよ、楽になるし
だけど、一応俺らは男所帯だぜ?
多分俺らは問題ないとは思うけど、芹沢さんとかさぁ…」
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