梅だとか、舟だとか。

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女中の仕事は、まず朝の飯炊きから始まった。 朝早く起きて、寝間の長襦袢から、着なれない女物の着物になるべく手早く着替えていく。 桜色の着物に山吹色の前掛けをつけ、動きやすいようたすき掛けにしようと色褪せていない紅色のたすきを体に回した。 (とりあえず…白米…、……味噌汁…?あとは何だろう…焼き魚か?) 泉はとりあえず土間に向かいながら、朝食に出すべきものの名前を頭の中へとぽんぽんとあげていく。 ここではどんな朝食が出るのかなんて皆目検討もつかない、道場の時と同じ一般的な物でいいのだろうか? そんな事を考えながら土間の戸へ手をかけ、開く。 (あれ、一に…平助?) 「おぉ、小梅ちゃん」 気づいたらしい藤堂が振り向くと、それに乗じて斎藤も首だけ回し、女の姿を装った泉を視界にいれる。 手に菜切包丁を持った斎藤を見て一瞬恐れおののくが、気を取り直して土間へと足を降ろした。 平助に挨拶として礼をしてから、再び作業に戻った斎藤の手元を覗きこむと、何か黄色く長いものを等間隔に切り分けている。 (…………?) 「今日1日は私も手伝う、本来なら私らが当番だったからな」 「ほんとは一じゃなくて俺ともう一人なんだぜ?全くあの人どこほっつき歩いてるんだか…」    「昨夜は帰ってきたな 今朝は顔を出すだろう」 「なに!? じゃあ朝飯つくんの手伝えよあの女ったらしぃ!」 菜箸片手に豆腐をつつきながら藤堂がぶつぶつと愚痴をもらす。 「…一、何を切ってるんだ? 凄い綺麗に切るんだな…」 泉が小声で囁くように問うと、斎藤は一旦包丁を持つ手を外し、切っていたものを一枚取り上げると、それを間抜けにぽかんと開いている泉の口の中にちょい、と入れる。 切り方を誉められたからなのか少し機嫌を良くした様子でそれをぼりぼりと噛み砕く様子を眺めてから、再び包丁を手に取る。 「沢庵だ」 「…あぁ、沢庵か」 「ちょっ二人とも何してんだよ!ずるい!」 「あぁ平助、お前も食うか いいんだよ、私の土産物だから はは、皆には秘密だぞ」 「一が笑った!? うわっちょっ止めろよ!男から貰ったって嬉しくねぇしっ!小梅ちゃんがちょうだいよ!」 (とりあえず首振っておこう…) 「うぇっ何でさ!」 「おいおい、女中が来るとは聞いてたが、斎藤と恋仲なのか」 「だから恋仲ではなく…」  
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