XX 闇の中の私刑

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XX 闇の中の私刑

 切り立った崖の上。夜の闇。  そんな中、俺は気を失っている標的を見下ろしていた。 「……ぶざまだな」  笑いをこらえるのに苦労する。 「やっとこの時がきたよ――」  俺は歓喜とともに包丁を振りかざす。  ――ようやく恨みを晴らせるのだ。  包丁の柄を両手でしっかりと握り、力強く振り下ろす。あたかも処刑のギロチンのように。  ――まず突いたのは喉。  ――次は心臓。  ――そして腹。  ――最後は……下腹部。  そこは特に念入りに突き立てたが、恥骨らしき物に当たって深く体内には刺さらなかった。  ちっ……もういい。  俺はいらついて、また腹を刺した。  標的は気絶している上に口にガムテープを貼ってあるので、悲鳴も命乞いもないのが物足りない。しかし声を出されては人が来てしまう。 「しかたねえな……」  舌打ちして、また体をめった刺しにする。  何度も何度も。深い恨みをこめて。
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