XX 闇の中の私刑

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「はあっ、はあっ……」  何度も荒い息を吐く。目の前の死体は最早肉塊と化していた。  ――ははっ、ざまあみやがれ。当然の報いだ。 「……じゃあな」  俺は敷いていたブルーシートごと、肉塊を崖から蹴落とした。  死体は真っ暗な海に吸いこまれるように消えていった。  ……なんだ、終わってみればあっけないものだ。 「せめてこの後は、もっと楽しませて欲しいもんだな……」  俺は返り血よけに着ていたレインコートと手袋と目出し帽を脱ぎ、包丁と一緒に海へ投げ捨てた。そうしてすぐにきびすを返す。  ――さあ、果たして誰かこの『野洲 悟』が犯人だと証明し、トリックの全貌を明かせるかな? 「……できるはずがない。誰にも」  俺は呟いてほくそ笑む。  ――ましてあの探偵気取りの間抜けそうな女……『ひねり』などには。
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