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「はあっ、はあっ……」
何度も荒い息を吐く。目の前の死体は最早肉塊と化していた。
――ははっ、ざまあみやがれ。当然の報いだ。
「……じゃあな」
俺は敷いていたブルーシートごと、肉塊を崖から蹴落とした。
死体は真っ暗な海に吸いこまれるように消えていった。
……なんだ、終わってみればあっけないものだ。
「せめてこの後は、もっと楽しませて欲しいもんだな……」
俺は返り血よけに着ていたレインコートと手袋と目出し帽を脱ぎ、包丁と一緒に海へ投げ捨てた。そうしてすぐにきびすを返す。
――さあ、果たして誰かこの『野洲 悟』が犯人だと証明し、トリックの全貌を明かせるかな?
「……できるはずがない。誰にも」
俺は呟いてほくそ笑む。
――ましてあの探偵気取りの間抜けそうな女……『ひねり』などには。
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