1 静けさの中の嵐

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「――『真面目そうな男』、か」  自分で思った言葉にふきだしてしまう。  ……俺はこれから人を殺そうというのに。  苦笑しながら部屋を出て、階段を下りる。 「やっぱりホテルというよりは、洋館風の別荘のような造りだな……」  呟きながら一階へ下り立つと、目の前はロビー。まあそう呼ぶには少しささやかな空間だが。  階段の真っ正面が玄関で、その左脇にはソファーとテーブルの置かれた一角があった。そこは談話スペースのような趣だ。 「ん……?」  そこにしょんぼりと座っている少女がいた。荷物も置きっぱなしで。  ――あれは一年の『ひねり』……『日根野 鋭利』だ。  俺はゆっくりと歩みよった。  セミロングの髪に、童顔だが『真面目そう』な顔つき。  ……まあ人間外見じゃ判断できない。  ――そう、俺のようにな。  こいつだって大人しそうな顔をして、腹の中にどんな獣を飼っているか――。
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