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「――『真面目そうな男』、か」
自分で思った言葉にふきだしてしまう。
……俺はこれから人を殺そうというのに。
苦笑しながら部屋を出て、階段を下りる。
「やっぱりホテルというよりは、洋館風の別荘のような造りだな……」
呟きながら一階へ下り立つと、目の前はロビー。まあそう呼ぶには少しささやかな空間だが。
階段の真っ正面が玄関で、その左脇にはソファーとテーブルの置かれた一角があった。そこは談話スペースのような趣だ。
「ん……?」
そこにしょんぼりと座っている少女がいた。荷物も置きっぱなしで。
――あれは一年の『ひねり』……『日根野 鋭利』だ。
俺はゆっくりと歩みよった。
セミロングの髪に、童顔だが『真面目そう』な顔つき。
……まあ人間外見じゃ判断できない。
――そう、俺のようにな。
こいつだって大人しそうな顔をして、腹の中にどんな獣を飼っているか――。
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