1 静けさの中の嵐

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「あ、ヤス先輩……」  うつむいていたひねりが顔を上げる。 「おい、どうしたひねり。何かあったか?」 「――いえ、まだ何も……でも、これから何かが起きるんです」 「え――?」 「スフィンクスの涙が反応――あ、いえ……」  こいつ、何を言ってるんだ? 「あの、先輩……もし、よからぬことを考えているなら――やめてくださいね」  なんだと……? 「絶対に――絶対にいい結果にはなりませんから」  ……はっ、いまさらやめたりなどするものか。  ――しかし気持ちの悪い女だ。こいつ、何か察してるんだろうか?  だが俺は何食わぬ顔をして答える。 「ははっ、何言ってるんだ、ひねり。疲れてるんじゃないか? 早く部屋で休め」 「そうですか……」  ひねりは荷物を手にした。 「――でも、もし先輩がそうなら……本当にもう一度よく考えてくださいね」  元気なく去る。  その後ろ姿を心の中で嘲笑いながら見送り、そして小さく呟いた。 「……ああ、よく考えたさ。そうして思いついちまったんだよ」  ――誰にも解けない完璧な殺害計画を、な。
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