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「あ、ヤス先輩……」
うつむいていたひねりが顔を上げる。
「おい、どうしたひねり。何かあったか?」
「――いえ、まだ何も……でも、これから何かが起きるんです」
「え――?」
「スフィンクスの涙が反応――あ、いえ……」
こいつ、何を言ってるんだ?
「あの、先輩……もし、よからぬことを考えているなら――やめてくださいね」
なんだと……?
「絶対に――絶対にいい結果にはなりませんから」
……はっ、いまさらやめたりなどするものか。
――しかし気持ちの悪い女だ。こいつ、何か察してるんだろうか?
だが俺は何食わぬ顔をして答える。
「ははっ、何言ってるんだ、ひねり。疲れてるんじゃないか? 早く部屋で休め」
「そうですか……」
ひねりは荷物を手にした。
「――でも、もし先輩がそうなら……本当にもう一度よく考えてくださいね」
元気なく去る。
その後ろ姿を心の中で嘲笑いながら見送り、そして小さく呟いた。
「……ああ、よく考えたさ。そうして思いついちまったんだよ」
――誰にも解けない完璧な殺害計画を、な。
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