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お決まりの無駄に校長の話が長い始業式を済ませると、HR後すぐに下校になった。
自席で帰り支度をしていると千夏が声をかけてきた。
「ねぇ、この後カラオケ行かない?」
俺は問題無いのだが…。
隣の席で帰り仕度をする蘭に確認の意味で声をかける。
「蘭、お前は行くのか?」
「えっと~…。その…今日はバイトが入ってて…」
予想は的中。
こいつが午前で終わるっていうのに働かないわけが無い。
蘭は、残念がる千夏に平謝りしながらそそくさと教室を出て行った。
「まだ大変なんだな…。あいつ…」
蘭の背中を見送りながら和也が気を落としたように呟く。
というのも、蘭の家は父親が居らず
ド貧乏というわけでは無いが、やはり一般家庭よりは生活が苦しい。
妹と自分を養う為に、倒れるまで働く母を見て育った蘭は高校入学と同時にバイトを始めた。
いや、バイトなんて生易しいもんじゃないかもしれない…。
朝は、早朝から新聞配達をし、学校が終われば毎日夜遅くまで、飲食店とコンビニをかけもちして結局ほとんど週7日働いている。
あの華奢な身体で…。
「その事についてはあいつには触れないでやってくれ」
「あぁ、分かってる…」
少し悔しそうに頷く和也を見て俺は思う。
あれだね、結局イケメンっていつでもイケメンなんだね。ズルいや。
三人で楽しむのもなんだからまた今度の機会にと、今日は解散になった。
家に帰り母さんが今朝作った弁当を食べながら、録画したまま見ずにいたテレビを見て暇をつぶした。
夜、自分の部屋の布団の中で目を閉じると夕方から降り続いている雨の音がやけに耳に入り中々寝付けなかった。
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