15人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ、あの……学校の事だけど……私、やっぱりここから通いたい。だから、最初に決めた学校にする」
真緒は思い切って自分の考えている事を伝えた。
やはり葛城や公平たちが勧める学園には行きたくないのだと――。
「真緒、その事なんだが……実は……」
公平が言いよどんでいると、電話し終えた静香がリビングにやってきた。顔色は随分と良くなっている。
「あなた、ちょっといいかしら?」
静香が公平を呼んだ。
公平は立ち上がり、ふたりとも黙ってリビングを離れる。それを真緒は不安げに見つめた。
数分経ってもふたりが戻らないので、とりあえずテレビをつけて朝食をとる事にした。
「たった今入った情報によりますと、昨夜11時頃に、この諸石東(もろいしひがし)中学校付近で、怪しい人物がうろついていたとの事です。えー、その目撃者によりますと……」
テレビ画面にマイクを持つ女の人が映っていた。緊迫した表情でこちらを見ている。
背景には建物がなく、かわりに瓦礫の山があった。まるで大地震が起きたあとみたいだ。
真緒は焼けたトーストにイチゴジャムを塗ろうとしていたが、諸石東中学校と聞いてすぐさま手を止めた。
「えっ……」
そして画面に映る光景を見て絶句した。
なぜなら、諸石東中学校は、真緒が通おうと決めた学校だったからだ。
最初のコメントを投稿しよう!