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「真緒、さっき諸石東中学校から電話があって、ある事情で校舎がなくなったから、授業ができない状態らしいんだ」
「うん、知ってる。今ニュースでやってるから」
リビングに戻ってきた公平が真緒に学校の事を話すと、真緒は顔をテレビの方に向けたまま、小さな声で返事した。
「そうか。じゃあ、今がどういう状況か、もうわかっているんだな……。新しく校舎を建てるそうだが、すぐに完成はしないだろう。でな、完成するまでの間、学校のみんなは他の近隣の学校に通う事になったらしいから、真緒もしばらくの間は――」
「パパ、それじゃあ私、もういっこの学校にする」
公平の説明の途中で、真緒は言い放った。
「え?」と公平が問い返す。
「だから、私、パパやママが勧めてくれたもうひとつの学校に行く事にしたから」
「真緒? 本当にそれでいいのか? 全寮制だからここから通えなくなるんだぞ?」
「うん……。だって、また学校が変わったりするの、嫌だもん。それに、もう他の学校は受け入れてくれないんでしょう?」
「そうだな。一応聞いてみるが、無理かもしれないな。真緒がそれでいいなら、パパやママも助かるが……」
「うん、私はそれでいい」
そう言ったものの、真緒は完全に元気を失っていた。どうせこんな事になるのではないかと予想していたからだ。
「いいんだな、本当に」
「うん」
「……わかった。明日、葛城さんに連絡しておく。と言っても、どうなるかわからんがな。今、この町自体の警備が厳しくなっているだろうから、外に気軽に出られないだろう。学校が始まる頃には落ち着いているといいんだが。それにしても……いや、真緒は気にしなくていい。とにかく、今は外に出るな。いいね?」
「うん、わかった」
「……真緒、きっと良くなる」
公平は小さく微笑みながら、真緒の頭を優しく撫でた。
真緒は相変わらず暗い表情を浮かべたまま黙っていたが、ふとその時電話が鳴り、びくっと体を震わせた。
公平がその電話を取り、真緒を手招きする。
「えっ……パパ、誰なの?」
「圭一だ。早く来なさい」
「お兄ちゃん?」
真緒はすっくと立ち上がり、公平のそばに寄った。
「もしもし? お兄ちゃん?」
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