奇妙な出来事

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 その言葉が、同じリビングにいる公平の耳にも届いた。 公平が疑わしげに真緒を見ると、真緒は壁の陰にこそこそと隠れた。 「まさか、そんな事……。それ、パパたちは信じているのか?」  受話器からもれる圭一の声。 真緒は公平が耳をそばだてていても聞こえないように、両手で電話を握り直し、小声で話した。 「だからね、お兄ちゃん。パパたちもその日からちょっとおかしいの。時々ぼーっとしたり、この前なんかママがお皿をうっかり3枚も割ったんだよ。こんな事話して、まともに聞いてくれるわけないよ」 「それは確かに変だなぁ。ママがうっかりして皿を3枚も割るなんて、普通じゃない」 「でしょ? 私、あの人が悪魔なら、ハイド学園に行きたくない」 「真緒……それが本音なんじゃないか? 本当は行きたくなくて、そんな嘘をついてるんだろ」 「まさか。そんな事ないよ。お兄ちゃん、信じてくれないの?」 「いや、信じるよ。真緒が本当だって言うんなら。けど、証拠がないし、実際に俺はその場にいなかったわけだから。わかるだろ? 普通、そんな話を聞いたら疑うもんだよ」 「でも、本当に本当なんだってば。私、あの人の目の色が変わった所、この目でちゃんと見たんだから。きっと、パパやママもあの人に何かされたんだよ。でないと、こんな話、わざわざお兄ちゃんにしないよ」  真緒は叫びたい気持ちを抑えつつ、懸命に主張した。
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