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「わかった。わかったよ、真緒。そこまで言うなら信じるよ。でももし、そのハイド学園に行く事になったらどうするんだ? まさか、家出したりしないだろう?」
「その時は……かも……」
「え?」
「わからない」
弱々しい声で真緒が答えると、電話の向こうで圭一がため息をつく。
「とりあえず、俺も他の学校がないか探してみるし、パパにも相談するから。それでもし無理なら、また考えよう」
「でも今の話、パパとママにはしないでね」
「わかってるって」
「ところでお兄ちゃん、いつこっちに帰ってくるの?」
「多分もう少し先になるかな。明日から大学のサークルのみんなと旅行に行くから。あ、サークルっていうのは中学でいう部活みたいなもんだよ」
「へぇ、なんだか楽しそう。それにひとり暮らしだもんね。私も早くそんな生活がしたいな」
それからふたりは、たわいもない話をして電話を切った。
この時、すでに闇の扉が開かれている事を、誰も知るよしはない。
たったひとり、その闇の世界へ行く事になる真緒をのぞいて――。
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