迎えのバス

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 ふたりが車のなかに入り、まもなくすると、静香も助手席の扉を開けて入った。 「圭一、車に真緒の荷物乗せた?」 「ああ。後部座席にあるよ」 「真緒、忘れ物はない?」 「ないよ」 「それじゃあ、出発してちょうだい」  静香がそう言うと、圭一はエンジンをかけた。 車がガタガタと揺れる。 「もう車もかえ時ね」 「だったら俺にくれない? まだ免許取って間もなくて、新車は傷つけたくないからさ。これだといくらでも傷つけてオッケーだろ?」 「また調子の良い事を言って。今晩、パパに聞いてみなさい」 「パパなら絶対いいって言ってくれるよ」 「もう圭一ったら。そんな事より安全運転で頼むわよ」  静香と圭一が話すなか、真緒は後部座席でひとり、窓の外を眺めていた。  その様子をバックミラーでちらりと見た圭一が声をかける。 「真緒、パパが今日見送れないから迎えに行く時は必ず行くって言ってたよ」 「良かったじゃない、真緒」  と、静香も後ろを向いて笑顔を見せる。  それに対して真緒はうんとしか返事をしなかった。視線を外に向けたまま、ふたりと顔を合わさない。 車が進めば進むほど、学園に行きたくない気持ちが真緒のなかで風船のように膨らんでくる。  静香は困った顔をして前に向き直った。 「それにしても、爆破事件の犯人が早く捕まって良かったわ」 「ああ、確か25才くらいの男3人組だよね。四角い大きな装置で爆破したっていう……でもどこでそれを手に入れたか誰も覚えていないって」 「しらばくれているのよ。そんな事した理由もなぜか思い出せないって言っているみたいだし……そんなの、嘘よ。ありえないじゃない」 「うん、まったく同感だよ」  3人を乗せた小さな赤い車は山に入り、左へ右へとぐねぐね曲がった道を走った。途中、空がさらに曇ってきて雨が降り出した。 「運転しにくいな」  ひきつった顔の圭一が呟いた。 「時間はまだあるから、急ぐ必要はないわ。ここは焦らず、ゆっくり行きましょう」  圭一の危なっかしい運転にハラハラしつつも、落ち着いた声で静香が助言した。
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