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だが、雨は勢いを増し、容赦なく地面や走る車を叩きつける。
視界は悪くなる一方で、圭一の運転する車はさらに速度を落とし、ぬかるんだ道をのろのろと走った。
「すごい雨! まるで滝みたい」
外の景色が雨のせいで見えなくなったので、真緒は諦めて前を向いた。
フロントガラスはサイドガラスよりも幅が広いため、雨のすごさに迫力が増して見える。
「それに、ものすごい音。本当にまるで滝のなかをくぐっているみたいだわ」
叩きつけるすさまじい雨音を聞きながら、静香も驚嘆した。
「ねぇ、走るのをやめて雨が弱まるのを待とうよ」
真緒は提案した。
これで少しでも学園に行く時間が延びればラッキーだと思ったからだ。
「そうね。少しくらいなら停まって休憩しても良さそうだわ。このまま走っていたら事故を起こしかねないし……ねぇ、圭一?」
静香が呼びかけたが、圭一は反応しなかった。
目を凝らして前を見据え、時々ちらりと横を見ては少し速度を上げようとする。運転に集中しているわりにはどこか落ち着つきのない様子だった。
そんな彼の動作に、静香と真緒が互いに目を合わせ、首をかしげた。
「お兄ちゃん?」
真緒が呼びかけると、圭一はやっと気付いた。
「今、俺を呼んだ?」
「うん、呼んだよ。ちょっと走るのをやめて休憩しようよ」
「いや、それは……」
「どうしたの?」
静香が尋ねた。
それでも相変わらず車の運転に集中しているせいか、圭一はすぐには答えなかった。
「今は、停まれない」
「どうして?」
真緒が身を乗り出して聞いたが、
「真緒、危ないからちゃんと座って」
圭一にそう言われて渋々もとに戻る。
「今、後ろから車が来ているんだ。それも、はりつくように」
「え?」
真緒はすかさず背後を見た。
曇ったガラスに雨が幾筋も流れ落ち、はっきりとは見えないが、確かに車がすぐ後ろまで来ていた。真緒たちが乗っている車よりも大きく、まっ黒な色だ。
「困ったな」
圭一は眉間にしわを寄せた。
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