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「それと、一部の人間でしか入れないというのは、優秀な人材の育成のため、なにか秀でたものを持っている生徒に限定しているからなんです」
「つまり、真緒はそれに該当するというわけですか?」
「はい、そうです」
圭一の問いに葛城がうなずいた。
「真緒さんは絵を描くのが得意ですよね? 昨年のコンクールで大賞を取ったらしいじゃないですか」
「ああ、確か取ってたっけ?」
圭一が真緒に聞くと、真緒は照れくさそうにうんと小さく返事した。
「じゃあ、どうやって連絡は取るんですか? 母の話によると、電話を設置していないと聞きましたが」
「連絡手段としましては、手紙でお願い致しております。電話がある事はあるのですが、緊急用としてしか使用を認めておりません。また、手紙を投函する際は学園専用の黒ポストにお願いします。住所は書かなくて結構です」
「黒ポスト? そんなのあるんですか?」
「はい、ございますよ。ここに来る途中、見かけませんでしたか?」
「いや、見てない」
「そうですか。ちょうど山のふもとにあるんですけどね。ぜひ帰る際に確認してみて下さい」
葛城はそこまで話すと、ネクタイの結び目をつかんで整え、腕時計に目を落とした。
「そろそろ時間ですね。他になにか質問はございませんか? なければこのへんで真緒さんを学園まで案内したいのですが」
いつのまにか日も暮れ、あたりは闇に包まれていた。
「そうね。それじゃあ私たちはこのへんで帰りますので、どうかこの子をよろしくお願いします」
静香が真緒をそっと押し出し、ぺこりとお辞儀した。
「マ……母さんっ」
「圭一、これ以上なにを質問するっていうの? 真緒を学園に預けるのが心配なのはわかるけど、これ以上お待たせするわけにいかないでしょう? 遅れたら大変だし、真緒ならきっと大丈夫よ。ね、真緒?」
静香にそう言われて、真緒はうんとしか答えられなかった。
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