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「新しい生徒さんですな。名前は?」
その人物は紺色の帽子に紺色の制服を着たバスの運転手だった。
がっちりとした体型で声が低く、肌は青紫色だ。口まわりにひげをたくわえている。それと今にも飛び出そうな大きな目玉が2つ。充血して赤い。
真緒はブルッと震え上がった。
「ごきげんよう。菊川真緒です。よろしくお願いします」
真緒のかわりに葛城が挨拶をした。全く臆する事なく、それどころか、にこやかだ。
「これが身分証明カードです」
続いて、胸ポケットからカードを取り出し、運転手に渡した。
「中等部1年ですな」
「はい。それと、あちら側に長くいたので学園の事は全くといっていいほどわかっておりません。その旨を学園にお伝えください」
葛城が事情を話すと、運転手は興味ありげに真緒をじろじろと見た。
「ほう、なるほど……。承知した。では、荷物を預かろう」
真緒はなんの事だかさっぱりわからなかったが、じろじろと見られるのはあまり良い気分ではなかった。
「真緒ちゃん、ここで私とお別れだ」
「え?」
真緒が横を向くと、葛城はどこか寂しそうに笑みを浮かべていた。
「といっても、また学園内で会うかもしれない。不安な事がたくさんあると思うけれど、きっと周りの人が助けてくれるよ。だから頑張って。そして、学園生活を楽しんで」
葛城を怖がっていただけに、彼の優しさに触れた気がした真緒は、なんて言ったらよいのかわからなかった。
そして早くバスに乗るよう急かされ、真緒はステップに足をかけた。
プシューッと空気が抜けるような音とともに、どこからともなくあらわれた煙がバスを包み込む。
真緒は慌ててバスのなかに入り、すぐさま後ろを振り返った。そこにもう葛城の姿はなかった。
「さぁ、席について」
扉が閉まり、不気味な運転手に声をかけられ、真緒は恐る恐るバスの奥へと行く。
だが、目の前の異様な光景に足がすくんでしまった。
バスのなかは見た目と違ってかなり広く、1番後ろまで見えない。まるで飛行機のなかのようだ。天井にあるのは電気ではなく、丸い光の玉がいくつもぶら下がっている。そしてその光に照らされた乗客は、この世の人間とは思えない生徒達だった!
「あ、あのっ……!」
すぐさま後退し、真緒は運転手に話しかけた。
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