迎えのバス

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「すみません、私やっぱり……乗りません。帰らせてください」  だが、運転手は聞こえていないのか、全く応じようとしない。 「すみません! 私、降ります!」  大きな声を出しても、前を向いたまま一言も話さなかった。  真緒は諦めてどうしようかと考えたが、どうしようもなく、勇気を振り絞って再びバスの奥へと踏み出した。  生徒達皆が真緒の方を向いて座っている。 ひそひそと話し声がするものの、幽霊のように活気がなく静かだ。 肌は青白かったり薄紫だったりとさまざま。髪も茶や緑など色とりどりだが、灰みがかっているせいか、くすんでいてどんよりと暗い。 異様に目の色だけ明るい者が多く、真緒はそんな生徒達と目が合うたびに息が止まるかと思った。  だが、見た目が異質なだけで真緒に襲いかかる事もなければ逃げ出す事もない。  仕方なく空いている席を探す事にした真緒は、あまり誰とも目を合わさないようにして、よろよろと重いあしどりで通路を歩いた。  ふと、明るい少女の声が先方から聞こえてきて、近づくにつれ、誰かと会話しているのがわかる。  真音は無意識にその少女の姿を確認しようとしていた。 「あんた達、あまりそのチョコ食べないでよね! 結構高かったんだから」 「俺は、そんなに食ってない」 「なにそれ! まるで僕がいっぱい食べてるみたいじゃんかぁ」 「……うるせぇ」  会話の内容がはっきりとしてくると同時に、その正体も明らかになった。  4人掛けのいすに、少年ふたりが少女を挟むかたちで並んで座っている。年は真緒と同じ年くらいだ。 黒っぽい頭、紫の頭、赤い頭に茶色い三角の耳。 頭だけ見てもやはり普通とは違う雰囲気が真緒に伝わった。 「なに? 席を探しているの?」  真んなかの、紫の頭をした少女が真緒の存在に気が付いた。  見上げる少女の顔は色白だが、ほんのり赤みがあり、真緒と同じ黒い瞳をしている。 「うん」  真緒は顔や体を強張らせたまま答えた。 ちょうど手前のいすが空いている。 「そこ空いているわよ。座ったら?」  すると、その空いている席の隣に座る少年が、少女と同様に顔を上げて真緒を見た。
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