奇妙な出来事

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「そういうわけだから、私、夏休みが終わったら違う学校に行かなきゃいけなくて」  翌日の下校時、真緒は仲の良い友達、光子と桃佳に打ち明けた。 「ええっ? 引越しするの? じゃあ、もう今までのように学校で会ったり遊んだりできないって事?」 「いつも一緒だったのに、離れるなんて嫌だよぉー」  光子も桃佳も真緒の引越しと転校の話を聞くなり驚いた。 「私だって、2人とずっと一緒にいたいよ。高校も同じ所に通って今まで通りおしゃべりして……。だけど、もう決まった事だから……」 「真緒のパパのお仕事上、仕方のない事だもんね。うん、わかるけどさ、やっぱりつらいよ」  光子が声のトーンを低くして表情をくもらせた。その隣にいる桃佳も、同じく表情が暗い。  そんな2人を見て、真緒はますます離れる事がつらくなり、目が涙でうるんだ。 「ここからどのくらい遠いの?」  桃佳が尋ねた。 「車で3時間はかかるかな。田舎だって言ってたから」 「そっかぁ……。でも、会おうと思ったら会える距離だよね? 私、真緒が引越ししても、会いに行くよ!」 「うん、離れても私達ずっと友達だよ!」 「桃ちゃん、みっちゃん……ありがとう」   真緒はこらえきれず、涙がこぼれた。その頬を伝うしずくが、太陽の光に反射して輝く。 「真緒、なに泣いてんの? ほら、笑って? でなきゃ、私も……泣けて……うっく」 「そうだよ。泣いたら、余計つらくなっちゃう……」  光子も桃佳も思わず目から涙が溢れて、声がかすれた。 そしてその場でひとしきり泣いた後、光子の「私達うさぎみたい」という言葉に、真緒達は笑った。3人とも泣いたせいで目が赤くなって腫れている。 「さ、帰ろう」  桃佳が真緒に手を差し出した。 それを見た光子も手を差し出す。 普段、手をつないで帰る事はないが、この時だけは特別だった。  真緒は照れくさそうに笑いながらも「うん」と答えて2人の手を握った。
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