迎えのバス

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「嫌よ、それ、もう飽きたわ」  それを見るなり、麗華はうんざりしてため息をついた。 「いいじゃん、しようよ。今度は真緒ちゃんもいるし、4人で遊べるんだ。絶対に面白いよ」  遊は手に持つ紙コップのような物を軽く振った。なかに入っているものがカタカタと鳴る。 「それ、なぁに?」  真緒は遊の持つ物がよく見えず、麗華達に質問した。 「真緒、カップゲームよ。遊んだ事ないの?」  麗華が答えた。 「うん……カップゲーム?」 「そう。今すごく流行ってる使い捨てゲーム」 「違うよ。マジックカップゲームだよ」  骨の菓子を半分かじった遊が、口を挟んだ。 「マジックカップゲームを別名、使い捨てゲームって言うのよ」  再度、麗華は言った。 「真緒ちゃんがした事ないんだったら、しようよ! ね、真緒ちゃん、したいよね?」 「……うん。してみようかな」  真緒がひかえめに答えると、麗華はすかさず遊の方に向き直り、にらんだ。  遊は残りの骨の菓子を頬張って、にやにやしている。 「俺は、やめておく」  ぽつりと貴夜が言った。 「えーなんで? せっかく4人でできるんだよ? 貴夜も参加してくれないと困るよ」  笑顔だった遊が口を尖らせ、急に不満げな顔になった。 「そうよ、貴夜もしてくれなきゃ面白くならないじゃない。3人じゃあ無意味だわよ。ここは貴夜も参加決定なんだからね」  麗華もそう言うと、貴夜は不機嫌な顔をして黙りこんだ。そして少し間を置いた後、 「……わかった。合体させるなら、やる」  条件を出した。  隣にいる真緒にはなんの事だかさっぱりわからなかったが、貴夜の沈黙後に漂った気まずい空気がやわらいで、少しほっとした。 「合体かぁ」  遊は、うーんとうなずいてからその条件をのんだ。 「じゃ、決まりね。私、赤のペンで書くから」  麗華は遊が持っているカップのふたを開け、そこから小さな細いペンを取り出した。 「じゃ、僕は緑にする!」  遊もペンを取り出し、カップを貴夜に回した。  貴夜は黙って青のペンを取り出し、真緒にカップを渡す。  カップのなかには最後の1本、橙色が残っていた。 真緒はそれを取り出し、カップを貴夜に戻した。 「じゃあ、真緒のためにゲームの説明をするわね」  麗華はコホンッと咳払いをしてからそう言った。
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