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瞳の色が、黒から金に変わっている。さっきまでとはあきらかに違う、不気味な雰囲気を醸し出していた。
「パ、パパァ!」
驚いた真緒は震えた声で公平を呼んだ。
公平もなにかあったのだと察し、すぐに玄関へと引き返す。
「どうした?」
「パパ、こ、この人の目っ……」
真緒はその場で立ちすくみ、唾をごくりと飲んだ。
「目が、どうしたんだ?」
そう言って公平が葛城の顔を見ると、葛城の瞳はもとの黒い瞳に戻っていた。
「お父様、よろしければこのパンフレットを」
まるで何事もなかったかのように、大きな封筒を差し出す葛城に、公平はわけがわからず困惑しつつも受け取った。
「ねぇ、あなた。ここの学園、良い所よ。今ならまだ、決めた学校を取り消せるし、考え直してみない?」
「静香? おまえ、ここの学校を反対してたんじゃないのか?」
「別に反対はしていなかったわ。この子のためですもの。環境が良い所の方がいいんじゃないかと思って」
静香と公平の話を聞いて、真緒は静香を疑った。
「ママ? もしかして、この人になにかされたの? だって、さっきは……」
「私がなにかしたと? まさかそんな……」
真緒が言いかけて、葛城がそれを遮った。が、公平も葛城が言い終わらないうちに声を張りあげた。
「おまえ、私の妻になにかしたのか?」
「いきなり、なにを根拠にそんな事を言うんです? 私はただ、ここの学園はどうですかと勧めただけですよ?」
「だが、さっき私の娘が、おまえの目がどうのこうのと言っていたではないか」
「そうだよ、パパ。さっき、この人の目の色が金色に変わったの、私見たんだから」
ぎゅっと公平のシャツを握り、真緒は葛城をにらんだ。
だが、葛城はたじろぐ事もなく、涼しい顔で公平と真緒を見る。
「光が反射して、そう見えたんでしょう」
とても落ち着いた声だった。
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