プロローグ

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 彼が黒い両目を開いて見たものは、光が全く見えない暗い空と細かい粒で満たされた地上の姿だった。その景色が横になって見えるのは、自分が横向きになっているからだと気付く。一定のリズムで繰り返される水音が、耳に届いてきた。  視力と聴力を頼りに、ここがどこなのかを思い出してみようとするも、思い当たらない。知らない世界に数回目をしばたかせる。 (一体、ここはどこなんだい?)  軽く頭を揺らせば、右頬にざらついた感触がある。正体は無数の粒で、彼は左手を前へと伸ばした。それを一掴みして空中に持ち上げてみる。空が暗いために本来の色が分からない砂が、握り拳の隙間から零れていく。  それを最後まで眺め終えたところで、彼は頭に疑問符を浮かべた。 (これは、何だろうか)  視界に入るものについて、頭にあるはずの知識が答えを出してくれない。情報が何一つ出てこない自分に対して内心で首を傾げ、体を起こした。手をついて起こした事で、うつ伏せに倒れていたのだと知る。  立ち上がる途中で頭から何かが落ちた。中央に窪みがある、つばの広い帽子だった。それを拾い上げ、被り直すと、意外にも頭に馴染んだ。
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