プロローグ

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 うつ伏せになっていた時には見なかったが、暗かったゆえに気付かなかっただけかもしれない。新しく現れたそれに興味を持ち、拾い上げてみた。表面や白い横幅についた砂を払い落とす。それの名前は分からないはずなのに、何に使われるものなのかだけを彼は理解していた。  使う為の道具を探せば、これもまたあっさりと見つかる。スケッチブックを見つけた場所からさほど離れていない所に、小さな木箱が落ちていた。  一歩近付いてそれを拾い上げ、詳しい形を観察してみる。薄い木の板を用いて作られた小さな箱が上下に二つ、上からかぶせる形になって重なっている。  念の為に蓋を開けて中身を確認してみると、細長い六角形に作られた鉛筆が数本入っている。どれも先端を削ってあり、中の黒炭をむき出しにしていたが、折れてはいないようだった。あとは親指ほどの大きさをした白っぽい塊があるだけだ。触ってみると、少し柔らかい。  これらを使って自分は何をしていたのか。集めた事で少しだけ思い出す。 (私がしていたのは、絵を描く事だけじゃない)  描く以外の使用方法が頭に浮かび上がった時、砂浜の静寂を打ち破る声が耳に届いた。
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