コロッセオ

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剣先をゆっくりと左に流し、 右足をじりじりと、摺り足で斜め右へと運ぶ。 切り込むには、まだ、間がある。 右手に握っているのは、使い古されたブロードソードだ。 先刻、渡されたものだ。 刃こぼれなどは、研いであるが、何時折れてもおかしくない。 防具など身につけられる訳もなく、腰に性器を隠す程度の襤褸を纏うのみだ。 対峙している相手も同じだ。 低く構え、切っ先も地面に付こうかと言うほどに低くおいている。 おおかた、自分と同じく戦争捕虜から、拳奴に落とされたのだろう。 初めてみる構えだ。 相手もそうなのだろう。 互いに、始まってから、様子見に徹している。 観客は、退屈しだしたのか、ブーイングを飛ばし出した。
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