0人が本棚に入れています
本棚に追加
剣先をゆっくりと左に流し、
右足をじりじりと、摺り足で斜め右へと運ぶ。
切り込むには、まだ、間がある。
右手に握っているのは、使い古されたブロードソードだ。
先刻、渡されたものだ。
刃こぼれなどは、研いであるが、何時折れてもおかしくない。
防具など身につけられる訳もなく、腰に性器を隠す程度の襤褸を纏うのみだ。
対峙している相手も同じだ。
低く構え、切っ先も地面に付こうかと言うほどに低くおいている。
おおかた、自分と同じく戦争捕虜から、拳奴に落とされたのだろう。
初めてみる構えだ。
相手もそうなのだろう。
互いに、始まってから、様子見に徹している。
観客は、退屈しだしたのか、ブーイングを飛ばし出した。
最初のコメントを投稿しよう!