ココロの世界

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   世界は、ある日突然に生まれた。  神のココロから生まれたのである。  世界には百人の正義と百人の悪が存在していて、互いにどちらがこの世界に存在しているべきか争い、戦い、滅ぼし合っていた。  しかし。  たった一人だけ、そのどちらでもない存在の少女がいたのだった。 □□□  黒く塗りつぶされた空。星は無く、どこまでも果てしなく広がっていて、重く、落ちてきそうなくらい。  地面は白く塗られ、あちこちで瓦礫が高く積もっている。  相対する空と地面は、不安定な世界の雰囲気を醸し出していた。  そんな白と黒で創られた世界。  それが“ココロの世界”だった。 「……今日も、世界は順調に機能中也」  少女、だった。  小さな体躯から見ると、まだ十二、十三才くらいの子供である。  鉄のような灰色のショートヘアーに、髪と同じ色の瞳。体を包む、くすんだ色のローブが、地を駆ける乾いた風に大きくなびく。  少女は、一人瓦礫の山から地を見下ろしていた。 「……」  その灰色の瞳に写るのは、逃げ惑う一人の男の子の姿だった。  真っ白な髪を振り乱し。  赤い目を見開きながら息を切らし。  必死に何かから逃げるように走り行く。  もうすぐ来るその恐怖に少年は、恐れから涙をこぼしながら叫んだ。 「嫌だぁ!! 誰か……だれかタスケ」  助けて。  その言葉は、少女以外の誰にも届かなかった。  少年の言葉が言い終わらないうちに、背後から近づいていたその恐怖に。  少年は 呆気なく――切り捨てられた  ザンッ……! 「ぁ……」  叫び声すらあげられず、伸ばされた手も空を掴んだだけで。真っ白な少年は一瞬にして、ただの砂と朽ち果てた。  また地面は、白く染められてゆく。  あの少年がいた場所には、この世界の空と同じ真っ黒な髪の男が手に剣を携え、立っていた。 「フンッ」  男は、消えてしまった少年のことなどどうでも良いというように、すぐにそこから立ち去った。 「世界は、また悪を選んだ也」  高い瓦礫の山の上、少女は素っ気なく呟く。  今し方、目の前で一人の少年が殺されたというのに。まるでそれが当たり前だというように。 「正義はあと六十二しか居ない也。悪はまだ八十二居る也」  淡々と言葉を紡ぐ少女。  まるで、それは今の出来事を記録しているかのよう。 「――記録、完了也」
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