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「驚いただろ? 全部俺たちの手でつくり上げたんだ」
「正直、驚いた也……」
まさか、またこの世界にこの光景が蘇るとは夢にも思わなかったミカタだった。
その小さな村には、もう数が少なくなった正義達が生活をともにし生きていて、あの頃の世界が戻ってきたみたいだった。
正義と悪が百人ずつ存在していた、最初の世界が。
「俺は、守りたいんだ。今度こそ、この光景を。正義のために」
「だからお前は戦う也か? レイン」
「ミカタ……?」
急なミカタの質問にレインは驚き、ミカタの方を見た。
ミカタは、ただ真っ直ぐに目の前の光景を見たままだ。
「私は思う也。何故お前らは戦うのかと。レイン、お前は言った也な。この光景を守りたいと。だから戦うと。だけど、戦うたびにお前らの仲間は消えてゆく也。それでも良いのか?」
それは、ミカタが考えて一度も答えが出なかった問い。
ノインにもまともな答えが出せなかった。
それをレインはどう答えるか、ミカタは興味があった。
そしてレインは。
「戦わなければみんな滅んでしまうんだ。生き残るために戦わなければならない。たとえ犠牲が出てもだ」
「……悲しく無い也か?」
「悲しいさ」
レインは鼻で笑って見せる。
「だけど、これ以上そんな事が無いためにも、戦いは終わらせなきゃな」
それがレインの戦う理由。
だけどそれだけじゃ無いと、レインは続けた。
「正義こそ正しい道だ。神のココロは平和で、正しい方が良いに決まっている。だから俺は思うんだ。こんな戦いは無意味だってな」
「……無意味」
だったら、この戦いは今終わらすことはできないのだろうか――?
「ミカタ。もう一つ良いものを見せてやるよ」
そうレインは言うと、またミカタの手をとり村の中へと進んで行った。
「これだよ」
そこは小さな建物の陰の中。
そこで見つけたのは、見たことも無い鮮やかな色をしたモノだった。
白と黒しかなかったこの世界に、突然と現れたそれは、小さく儚げなのに白い砂の地面から力強く生えてきていた。
「これは、何也か?」
自分にすら感じられなかった変化に、ミカタは首を傾げるばかりだった。
「分からない。だけど、これはきっと俺たちに与えられた特別なモノだと思うんだ」
次第に大きく成長していくそれは、不思議な魅力があって、正義達は大切に育ててきたのだ。
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