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『あんたきょうからこの世界入りしたんだろ?
あたしがあんたを部屋に案内するよう指令受けたから付いてきてよ。ほら早く!』
早口でいきなり話しかけてきたのは年上の女だった。
言われるがままにあたしは付いて行って,到着したのは小さなアパートのような建物だった。
『ここでは4人一部屋の相部屋だからね。問題を起こしちゃだめだよ。特に新入りにはみんな厳しいから。
分からないことがあっても自分で解決するんだよ。
あたしも同じ部屋だけど,あんま頼んないでよ。めんどうだから』
乱暴にそう言うと,その女は部屋入った。
一瞬あたしはどうすべきか迷ったが,すぐに続いて部屋に入った。
部屋にはやはりもう2人いて,
1人は色黒で黒い天然パーマが印象的な大柄な女で,
もう1人は吊り目の幼女だった。小学校中学年といったところだろうか。
あたしが部屋に入ると,自然と視線はあたしに集まった。
幼い女は興味無さそうにすぐ視線を逸らしたが,
大柄な方の女はやたらでかい声で話しかけてきた。
というより怒鳴られたのに近いかもしれない。
『あんた誰だい?
新入りかい?』
『あぁ…まあ。
そんなもんですけど』
直感的にあたしはこの女が苦手だな,と感じた。
『あんた名前は?』
ほらきた。
現世でも他人のプライベートにずけずけ土足で入ってくるタイプだったに違いない。
『静香美(しずか よし)です』
『へぇ。ここのルールは厳しいから,自由な生活できると勘違いしたゃいけないよ。
分かってるだろうけどここはあくまで地獄なんだからね。』
地獄だったのか。
とくに興味ないけど,あたしは町並み的にもてっきり天国かと思っていた。
というか人の名前を聞いたなら自分も名乗れっての。
すこしばかり苛立ちを覚えながら,あたしはわざわざ聞いてやった。
『貴方のお名前は?』
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