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中学校を卒業する時,
父親を亡くした。
母親は専業主婦だった。
妹は癌だった。
母親は父親を亡くしたショックで,家から外に出ることが困難になり,買い物はもちろん家事さえ難しくなった。
必然的に,
あたしが働くことになった。
体力に自信があるわけでもないあたしは,鳶職なんかもできるわけなく,
アルバイトでなんとか生計を立てようと試みていたがはっきり言って無理だった。
無理だと気づいてすぐに,あたしはアルバイトを全て辞めた。
そのとき初めて,
女であることに虚しさと,根拠のない心強さを覚えた。
母親と妹にはとても言えなかったが,新しい職場で働くことになると,3人くらいならこれからは食べていけると確信していた。
でも現実はそんな甘いものではなかった。
女として働くからには,それなりに美貌が必要だった。
辛かった。
女としての価値と誇りは欲しかった。
それでももうアルバイトの生活には戻れないし,いつか自分が少しでも上に行く日を願いながら自我を捨てた。
母親は精神が病んでいても,娘の変化を見逃さなかった。
すぐにあたしに今の仕事を辞めるよう告げた。
あとはお母さんがなんとかするから
って泣いていた。
あたしは内心思った。
ばーか
って
娘から見て母親が働ける状態じゃないからあたしが働いてんじゃん。
自分と妹のことだけ考えてれば良いよ…って,かなり格好つけた。
でも日に日に自分の限界が近づいていることには薄々気づいていた。
特に精神的にはとてもしんどかった。
そして6月のある日迎えた誕生日。
あたしの働いているお店では,誕生日は店のオーナーに何か好きなものを1つ買ってもらえるという日だった。
あたしは考えた。
ちっぽけな脳みそで思いついたプレゼントは,毒蛇だった。
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