アジサイ

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時速40kmの車が横切ろうとしたから、持っていた傘を車道へと向ける。少しの間、髪と肌に強い衝撃を受けるのを感じた。 車が横切る瞬間、タイヤの回転に水溜まりが悲惨にも飛散する。決してギャグではない。 傘を車道に向けていたお陰で水溜まりの攻撃を受けずに済んだことを確認し、傘を頭上の定位置へと戻す。 少しの間傘をさしていなかっただけで、雨水は髪を潜り抜け地肌へと到達していた。雨水の中にドリルを持った妖精が居て、地肌を突き破らないことを祈っていると、俺のよく見知った人物が屈んでいるのを見つけた。 「…よっ。こんな雨の休日に何してるんだ?」 無視するのもいいが、好奇心が勝ってしまい、つい話し掛けてしまった。 「あ、結(ゆう)。結こそ、何やってるの?」 質問に質問で返された。また質問で返してやろうかと思ったが、質問が思い浮かばなかったから止めておく。 「俺は雨の日の散歩中だ。で、綾(あや)は何してるんだ」 「アジサイ見てたんだよー」 のんびりとした口調で言われた。負けじと「そーなんだー」とのんびり合戦を始めてみる。 いかん、これでは小学生だ。
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