知床の夏

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「あー、ユキ?何してるんですか?」 金髪碧眼の女が、頭の上にクエスチョンマークを浮かべてこちらを見ている。 こいつはヘレン・ミハイロブナ・佐藤。ロシア人ってのは、なんともまあ難しい名前だ。 日本で生まれ、日本育ち。本人は無理に英語を使おうとしてるが、実際に使えてるのはHelloとsee youだけだ。 俺のことをユキと呼んでいるのはヘレンだけだ。結城の最初と最後を取ってユキ。なんで他の奴らみたいに結って呼ばないんだ?と聞いたことがあるが、「ユキは雪ですよ!雪は素晴らしいです!」だそうだ。 人物説明終わり。今の状況を変えなくては。 「……冷蔵庫の中に、アイスが…」 言葉を発する気力すら失いかけているが、なんとか要件を伝える。 「アイス!?くれるのですか?ありがとうございます!」 ヘレンが冷蔵庫に駆け寄り、中から最後のアイスを取出して頬張る。 「……な、え?あ、ああぁあああああっ!」 悲痛な叫びを上げ、俺はうつ伏せに倒れた。 ああ、アイス。
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